となとな1の補足

科学の世界は知っても知っても、”実は、本当は”というような話が潜んでいます。

例えば筆者が最初に出会った”実は、本当は”は、電流と電子の話です。小学校の時「電流はプラスからマイナスに流れる」と教わりました。その時教材で使う電池の+側はポコっと出てて、なるほどイメージし易いです。ところが、少し大人になると、「電流の正体は電子の流れで、それはマイナスからプラスに移動している」と教わります。
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まま、この辺りには色々と壮大な大人の事情があったようですが、今回の”隣のとなりのサイエンス”第一話にも、大人の事情でちょっと嘘をついた描写があります。それは3ページの1コマ目。水の窓軟X線顕微鏡のポンチ絵が登場します。レーザーといえばこう、プラズマといえばこうという安直な描写がされていますが”実は、本当は”、だいぶ違います。

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フィクションの世界、特にSFでは必ずと言っていい程登場するレーザー、だいたいこんな描写が多いですよね。絵を描くにあたって、光は空気に次いで表現の難しいモチーフで、それをこうすればレーザーに見えると発明した先人の想像力には感服します。…ただ、それが科学的に正しいかというと、少し別の問題だったりします。

本当のレーザーがどういうものか、ちゃんとした説明はWikipediaあたりに丸投げして、ここでは見た目だけに絞って説明しましょう。

”実は、本当は”レーザーはガウス分布です。ガウス分布というのは、中心が濃く、周辺に行くに従って薄くなる分布のことで、図示するとこんな感じ。ボヤッとした線です。
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これで少し正確な絵になりました。でも、これでもまだ”実は、本当は”が存在します。実はこの研究では、パルスレーザーというのを使います。パルスというのは、ごく短い時間だけ発光するレーザーです。レーザーは光だから、言葉で表現するなら「一瞬の瞬き」という感じでしょうか。

特にこの研究では、この瞬きの短さというのがとても重要です。短くて濃いレーザーで作ったプラズマの方が、強くてきれいなX線を出します。というわけで、このレーザーの短さ、なんと3cmほど。
もし時間を止めて飛んでるパルスレーザーを横から見ることができたら、こんな感じです。
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これでだいぶ正確なレーザーになってきました。でも、これでもまだまだ、”実は、本当は”が存在します。実はこのレーザー、波長は1064nmです。人間の目で見ることができる波長、つまり可視光はおおよそ380nm〜800nmほど。つまりこのレーザー、実は目に見えません。
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というわけで、あのひとコマにも色々と大人の事情があったわけです…

さて、こうしてマンガ内で端折った”本当ところ”を、こちらのコラムで補足してみました。

でも、このコラムの説明でも端折った部分があって、その裏に隠れた”でも、本当は”があります。
もちろん筆者の理解を超えたところに潜む”でも、本当は”もたくさんあるし、その先には、人類が未だ到達していいない”でも、本当は”もあります。

そここそが正に最先端で、世界で一番面白い”でも、本当は”だと思います。