絵の良し悪しと審美眼について

これから絵を学ぶという人にとって最も重要なのは、審美眼です。
どの絵が良い絵で、どの絵が悪い絵なのか?絵の良し悪しを決めるパラメータは多くありますが、まずはその絵が、できるだけ多くの人から好かれるかどうか?というのが大きなポイントになります。

インターネットのおかげで、簡単に”お絵描き講座”のような情報が手に入るようになりましたが、その講座を作っている人の腕が良いのかどうか見極める力がなければ、学ぶ時間が無駄になってしまいます。

絵を描くということは、情報を取捨選択するということです。どの情報を強調し、どの情報を削るるか?ということの積み重ねが絵を考えるという工程で、その結果”他人にとって解りやすい情報源”としての役割を持ちます。
サイエンスイラスト・サイエンスマンガの場合、情報の取捨選択について、大きな部分ではご依頼者様と相談することになりますが、一つの絵に必要な取捨選択のすべてを相談することは、あまりに多くの時間が必要になるため出来ません。そこで頼りになるのは、自分自身の持つ知識と、感覚”審美眼”も要素の一つです。

絵に関する知識や技術は学べば誰でも伸びますが、審美眼は教えられて育つものではなく、自ら磨くものだ、と感じます。
まずは好きなものをたくさん作ることです。
観察対象が他人の絵なら、自分の好きな絵を見つけて、そのどこが好きなのか?真似できるところはないか?よく見ることが第一歩でしょうか。好きな絵の”情報の取捨選択”の仕方を一つ一つ、自分の中の引き出しとして蓄えていってください。

当然、仕事の場合は嫌いなものでも描かなければなりませんから、好き嫌い関係なく何でも細かく観察する癖をつけた方が良いのですが、嫌いな勉強は長続きしないですから、最初は好きなものに注意を向けるのが良いでしょう。
最終的には世の中すべてをなるべく好きでいたほうが自分にとって得ですが、嫌いなものは致し方ないです。私はバイクとラッキョウが嫌いです。バイクはスポークの向こう側の景色を描くのが面倒だから、ラッキョウは、ハズレのラッキョウの歯ごたえが嫌いです。

仕事なら描きますが。

サイエンスイラストレーター・サイエンスマンガ家 かつとあつと