高分子をイラストに入れるには?

特に生物学や、化学のサイエンスイラストを制作する場合、タンパク質などの大きな分子を絵に入れたくなる時があります。一番間違い無いのは、ご依頼を頂いた研究者の方に必要な画像を送っていただくことですが、皆さんお忙しいので、こちらで調べて「これであっていますか?」とお聞きするのが理想です。(大体の場合、そっちじゃなくてこっちのが近い、といった返信をいただけるので助かります。)

分子を調べる時とても役に立つのはPDBです。
http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do
英語版、日本語版などがありますが、どちらにせよ専門用語がモリモリなので、何語で表示されてもあまり関係ありません。検索する時はそれぞれの言語に合わせたほうが良いでしょうが、一般の和英辞書にはないような専門用語でも、とりあえず日本語でWikipediaへ行き、言語を英語に切り替えれば正確なスペルがわかります。
こうして打ち合わせのなかで登場したタンパク質の名前を検索して、該当ページからPDB形式のファイルをダウンロードし、普段使う3Dソフトで読み込みます。

すあなサイエンスでは、3DソフトはBlenderを使っているので(無料だからね!)、まずはPDB形式をBlenderで読めるようにする必要があります。Blenderで.PDBを読み込むプラグインは公式で配布されていて追加は簡単ですが、いかにも高分子な雰囲気を醸し出す”リボン”が表示できず、色々な原子のゴチャッとした集まりになってしまいます。

そこで、まずUCSF Chimeraを使います。
https://www.cgl.ucsf.edu/chimera/
UCSF Chimeraは絵を描くソフトとはだいぶ使い勝手は違いますが、表示をちょっと調整するくらいなら簡単です。


見栄えのためにいじりすぎて不正確になっては意味が無いのですが、PDBで見たことの有るタンパク質を検索してみると、案外世の中に出回っている画像は”整形済み”で有ることがわかります。
詳しい使い方は
http://yubais.net/doc/chimera/
こちらを参考にしながら、まずはselectで不要部分をhideしていきます。

ここでちょっと面白いのが、絵を描くソフトでは”選択部分”に対してどうするか?になるわけですが、このChimeraでは、”選択部分”の”Atomes/Bonds”に対してどうするか?”Ribbon”に対してどうするか?を指定するところです。

”Atomes/Bondsをどうするか?””Ribbonをどうするか?”は、Actionsから。これで見た目をすっきりさせたら、Export SceneでX3D[.x3d]で書き出します。なんとなくOBJで書き出したくなるのですが、OBJではBlenderで何故か上手く表示されませんでした。

それにしてもタンパク質は見ていて飽きないです。
みんな大好き人参のアレとか、こんなかんじ。

こちらはPubChemからダウンロードしました。
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/5280489#section=Top
ビローンて長いんですねえ。なんだか脂っぽい。ああなるほど、だから人参は炒めたほうがいいのかな?なんて具合に、どこかで聞いたタンパク質を眺めているとあっという間に日が暮れます。

仕事をしましょう。

サイエンスイラストレーター・サイエンスマンガ家 かつとあつと